あきゅらいず

Vol.5 病気未満

湯 忠立先生

2013/07/15

今では「未病(みびょう)」という言葉は一般的によく使われていますね。
でもこの言葉の正確な意味をご存じの方って割と少ないのではないでしょうか。

「未病」は中国医学から出てきた言葉です。

中国医学では、病気はバランスが崩れた状態と考えます。
どういうバランスかというと、『体内のバランス』『自然とのバランス』『環境とのバランス』など、あらゆるバランスが対象になります。

このバランスが崩れると病気になるわけです。

私たちをとりまく全てのものは私たちの体に影響を与え続けています。
体にやさしいこともあれば、厳しいこともあります。
この変化に順応するため、体も微妙に変化しています。

真夏の暑い日、何もしなくても汗が出てきます。
冬の寒い日には身体がちぢこまり、手先・足先が冷たくなります。
これは気候に合わせて体が反応しているからです。

kankyo henka.jpg

同じように、体の中でもバランスを調えようとする働きがあります。
体の組織の一部の機能が低下すると、全ての組織が反応して全体のバランスを調整しようとはたらきます。

この適応能力が低くなってしまった場合、或いは極端な気候の変化、環境の変化等で適応能力の限界を越えた場合、体に不具合が起きることになります。この状態を中国医学では病気と判定するのです。

では未病(病気未満の状態)というのは未だバランスが崩れていないのかというと、そうではありません。

未病も病気も、バランスが崩れている点は同じです。
体のバランスが崩れても、調節能力範囲内であれば未病という状態です。

大体において、私たちの通常の状態は未病といえます。
バランスが調った状態は、理想値と思って良いでしょう。
病気と未病、その境目は微妙なものですし、適応能力の強弱により個人差もあります。

「病院で検査して、どこも悪いところはないといわれたけど、何か調子が悪い」そう言って相談に来られる方が多くいます。

西洋医学では、症状に出ていないバランスの崩れを判断することは難しいのです。

中国医学では、病気になる前に崩れたバランスを修正する、つまり健康を維持することをとても重要視しています。

薬膳も、季節や環境、そしてその人に合った食材や調理法で、このバランスを調えるのが本来の目的なのです。

※記事の無断転用は禁じます。

この記事の投稿者

薬膳監修:湯 忠立(たん ぞんり)先生

中国遼寧中医学院大学付属病院の院長を務め、現在は東京・吉祥寺で中国医学整体院を営む。