あきゅらいず

Vol.78 三伏の話

湯 忠立先生

2015/07/29

今では「三伏(さんぷく)」という言葉は、ほとんど使われることがありませんね。
たまに暑中見舞いに「三伏の候」とあるくらいでしょうか。
 
この「三伏」とは、中国古代の陰陽五行説から生まれた暦の中の特定の日を指し、「初伏」「中伏」「末伏」を合わせて「三伏」といいます。

季節的には最も暑い時期、7月後半から8月初旬に当たります。
三伏の数え方には諸説あるようですが、最も一般的なのは、夏至の後、3回目の庚(かのえ)の日を「初伏」とし、4回目の庚の日を「中伏」、立秋の後、最初の庚の日を「末伏」とするものです。  

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中国古代では、五行説によって「木・火・土・金・水」の五行を更に陰陽(兄と弟)に分けて、「甲(きのえ)乙(きのと)丙(ひのえ)丁(ひのと)戊(つちのえ)己(つちのと)庚(かのえ)辛(かのと)壬(みずのえ)癸(みずのと)」の十干として順に数えました。

この中で「庚」は「かのえ(金の兄)」を表します。金の性質が強く出ている(兄なので)という意味になります。  
 
では何故、三伏が最も暑い時期になるのかというと、季節は夏、つまり五行では「火」が盛んな時期です。

ところが「金」は五行では秋に対応しています。そして五行説では、火と金は「相克」の関係にあります。
つまり火は金を溶かしてしまうように、金にとって火は苦手な存在なのです。

せっかく金が秋の気配をもたらそうとしても、夏(火)の暑さに負けて潜んでしまう(伏)ということになります。確かにこの時季は金属も溶けてしまいそうな暑さの日が続きますね。  
 
この時季は一年で最も陽気が盛んになる季節ですが、体内では陽気が発散しすぎて逆に陽気不足になりがちです。
こんなときに冷たいものをドンドン食べていたら、体内の陽気は益々衰えてしまいます。

五行では、金は肺や大腸と対応していますので、金の活動が抑えられると、こうした内臓にも悪影響を与えることになります。
三伏の時は、暖かいお茶で水分を補給すると同時に、寒気の侵入を抑える注意も必要です。 

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この記事の投稿者

薬膳監修:湯 忠立(たん ぞんり)先生

中国遼寧中医学院大学付属病院の院長を務め、現在は東京・吉祥寺で中国医学整体院を営む。