あきゅらいず

Vol.164 変わらないもの

湯 忠立先生

2017/05/10

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中国の詩の一説にこんな言葉があります。
 
 年々歳々、花 相似たり
 歳々年々、人 同じからず
 
毎年同じように、春になれば桜が咲きます。今年も去年と同じように桜は咲いています。でもそれを見ている私は、去年の私ではない。一つだけ年を取った私。その前の年も、同じ桜を見ている自分は、二年前の自分、今の私とは違います。
 
確かに、私たちの身体の中では絶えず細胞の新陳代謝が繰り返され、例えば消化器官の細胞は2~3日、筋肉細胞なら2週間くらいで完全に入れ替わっています。一年前、二年前の細胞は身体中どこを探しても見つかりません。
それでも、今の私も、去年の私も、その前年の私も、私であることは間違いありません。刻々と細胞が入れ替わっていても、私であり続けられるのは一体何故でしょう? それは、細胞同士の繋がり方が変わらないからです。私たちの身体の中は、全ての細胞、器官が有機的に繋がっています。その繋がり方が変わらないから、個々の細胞が入れ替わっても、私は私であり続けられるのです。
 
中国医学は、この繋がり方、関係性に注目しているといえます。それが理想的な形で維持されていれば、新しい細胞も充分にその機能を果たすことができるのです。そのためのノウハウの蓄積が中国医学だということもできるでしょう。
 
 

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この記事の投稿者

薬膳監修:湯 忠立(たん ぞんり)先生

中国遼寧中医学院大学付属病院の院長を務め、現在は東京・吉祥寺で中国医学整体院を営む。