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Vol.165 独楽のバランス

湯 忠立先生

2017/05/17

中国医学はバランスの医学だと、いつもお話ししていますね。季節や気候、地域や風土、こうしたものとのバランスを調えることによって、体内のバランスを適正に保って未病を防ぐ。これが中国医学の基本の基本です。ここで大切なのは、バランスをいかに調えるかということです。
 
「バランスを調える」というと、多くの人は弥次郎兵衛のように、左右の重さを同じにして右にも左にも傾かないで制止している状態を思い浮かべるでしょう。でも中国医学で言う「バランスを調える」というのは、これとは違います。なぜなら、体の中は常に活動を続けて、絶えず動いているからです。体内のバランスは刻々と変化しています。朝、目が覚めたときと、日中、活発に動いているとき、そして夜、ゆったりした気分になったとき、それぞれ体内の活動状態は違います。その時その時に合わせて、さまざまな活動に応じて、それでも体内のバランスを保っていく。これは静かにして、じっと動かないバランスの取り方ではありません。譬えていうなら、独楽(こま)が勢いよく回っていながら、あたかも動いていないように見える、そんなバランスです。自分自身は活発に動きながら、それでも見た目はじっとしているかのような、こうしたバランスの保ち方を中国医学では「バランスを調える」ことだと考えているのです。

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この記事の投稿者

薬膳監修:湯 忠立(たん ぞんり)先生

中国遼寧中医学院大学付属病院の院長を務め、現在は東京・吉祥寺で中国医学整体院を営む。