2013/07/15
「薬膳って体に良いんだろうけど、何かケッタイなものが入っていて美味しくなさそう・・・」
そう思っている人が結構多いですよね。でも本当の薬膳は、効能はもちろん、見た目や味も良くなければいけません。それは薬膳の成り立ちをみると納得できます。
もともと中国では、薬膳は「食養法」と呼ばれていました。
食事によって健康の維持や増進を目指して、時には病気の治療もするノウハウだったのです。
それが生まれたのは今から2000年以上も昔の話で、食養法は当時の「皇帝の健康管理」の為のものでした。
担当していたのは「食医(しょくい)」と呼ばれる医者、当時の医者の中では最高の地位にある人たちです。
食医は毎日、皇帝の肌の色艶を見たり、脈を取ったり、中国医学独特の診断法で皇帝の体調を判断して、その日の食事を決めていました。
目的は「未病(みびょう)」を防ぐこと。
簡単に言うと、中国医学では体の中のバランスが崩れると病気になるという考え方があり、多少バランスが崩れている程度だと病気にはならない。
でも、どこか調子が悪いと感じたり、時には全く気づかないこともあるんです。
これが未病です。
それを放っておくと完全に病気になってしまう。
この状態、つまり未病の段階でバランスの調整をすれば、健康が維持できるわけです。
そのために、その日その日の皇帝の状態に合わせた食事でバランスを調えたのです。
でも、当時の最高権力者の皇帝ですから、体に良いからといって素直に何でも食べることはありませんね。
「この食べ物はこんな効能があるんですよ。」と説明しても「こんなマズイものは食べられない!」と言われたらオシマイです。
そこで食医は、皇帝が気に入って食べてもらえるように、見た目も、味も良い料理を工夫しなければならなかったのです。
これが薬膳の始まりです。
確かに、同じものを食べても、それが本当に栄養になるかどうかは、食べ方によっても違ってきます。
料理を楽しみながら、そして美味しいと感じながら食べれば、間違いなく体を養うことになるでしょう。
薬膳では、ただ単に体に良い食材を集めるというだけでなく、その組み合わせや料理法、さらには食べ方まで注意が払われているのです。
こうして見てくると「美味しくなければ薬膳じゃない」というのも当然といえますね。
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薬膳監修:湯 忠立(たん ぞんり)先生
中国遼寧中医学院大学付属病院の院長を務め、現在は東京・吉祥寺で中国医学整体院を営む。