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Vol.4 見えないネットワーク

湯 忠立先生

2013/07/15

「ツボにハマった」とか「これが受験のツボだ」なんていう言い回しがありますね。
この「ツボ」という言葉は、実は中国医学から来た言葉です。

正式には「経(けい)穴(けつ)」と言い、経絡上(けいらくじょう)の特殊な点という意味です。

何が何だかわからないという方のために、順にご説明しましょう。

まず「肩こりのツボ」をイメージしてください。

肩が凝ったとき、ここを揉みほぐせば楽になるというポイントです。
おそらく大体の方がほとんど同じところを思い浮かべると思います。

では何故、そのポイントをほぐすと肩こりが楽になるのでしょう? そこがツボだからです。

ツボ(経穴)を刺激すると、それが経絡の通りを良くして、肩こりの原因を取り除くことができるのです。

では経絡ってどんなものかというと、体中に張り巡らされている「見えないネットワーク」です。

東京の地下鉄の路線図をイメージすると分かりやすいと思います。
地下鉄自体は、地上からは見えませんが、いろいろなポイントをさまざまなルートで結び付けています。
どんなに遠く離れていても、駅(=経穴)から乗って、路線(経絡)さえ間違えなければ、必ず目的の場所(不調の原因)にたどり着くことができます。

エッ、そんなものが体の中にあるの?と思われるでしょうね。
確かに、解剖してもレントゲン写真を撮っても経絡は見つかりません。

それじゃ実際には存在しないのかというと、間違いなく有るのです。

中国医学の長い歴史の中で、一つの駅(経穴)がどのルートを通ってどこにつながっているか、気の遠くなるような作業を繰り返して確かめられてきました。

「足(あし)三里(さんり)」を例にしてみましょう。

ashi sanri.jpg

膝下の外側3寸にあるツボ(経穴)です。「三里のツボ」というのを聞いたことがある人も多いでしょう。
この経穴は胃につながっています。
ですから胃の調子が悪いとき、中国医学ではこの足三里に対して鍼灸や推拿(すいな)(マッサージ)の治療をします。

すると胃を通る経絡の流れが良くなって、お腹の調子も調います。これはとても有名な経穴で、過去2,000年以上実際の治療に使われて確かな成果を収めています。

私たちの体の中には、こんなポイント(経穴)が360箇所もあります。
目には見えないけれど体中をつないでいるネットワーク・・・先入観を離れて自分の体を見つめると、その存在が確かに感じられるでしょう。

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この記事の投稿者

薬膳監修:湯 忠立(たん ぞんり)先生

中国遼寧中医学院大学付属病院の院長を務め、現在は東京・吉祥寺で中国医学整体院を営む。