2013/07/15
薬膳理論のベースになっている中国医学についてお話しましょう。
通常私たちは自分の体を、たくさんの細胞からできている色々な器官や組織によって構成されていると考えていますね。
皮膚に包まれた体の中に、臓器や筋肉組織・神経組織・骨組織などが配置されているという具合です。
これは自然科学を前提とした西洋医学の見た人体です。
西洋の医学では、人体を解剖学的に分析してそのパーツごとに考えていくので、全体は部分の集合体になります。
一方、中国医学では体全体を一つのまとまりと考えます。
人間の体は絶え間なく活動(変化)していて、体の各部分は深くつながりあって互いに影響を与えていると考えます。
このような人体活動を総合的に観察して、そのメカニズムの法則を体系化したのが中国医学なのです。
ですから病気の治療法にも大きな違いがあります。例えば風邪の治療について考えてみましょう。
西洋医学では、「異常な状態になった部分を正常な状態に戻せば病気が治る」と考えますので、喉の痛みや発熱、腰痛など各々の部所に対しての治療を施します。対症療法です。
中国医学では、体の中のつながりあう部分のバランスを整える、つまりメカニズムをスムーズにすることで治療しようとします。
互いの関係がスムーズで、各部分が滞りなく活動しているときを健康な状態と考え、体全体の流れのどこかに歪みが生じた状態を病気と考えるからです。
全身の活動のバランスを整える抜本的な治療といえるでしょう。こうした考え方を「整体(せいたい)観念(かんねん)」と呼んでいます。
「整体」というと按摩(あんま)やマッサージのことと思うかもしれませんが、本当の意味は「体内機能の相互関係をスムーズにさせること」なのです。
整体治療院に行って、「お腹の調子が悪いのに足の治療をされた・・・」なんて経験をされた方もいると思います。
お腹というパーツの不具合は他のパーツとのバランスを調整することで治療できる。
これが中国医学の「整体観念」です。鍼や灸も同じで、こうした体全体の活動のバランスを整えるという考え方の上に成り立っています。
もちろん薬膳も、整体観念を基礎として食材を選んだり、調理法を決めたりしているのです。
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薬膳監修:湯 忠立(たん ぞんり)先生
中国遼寧中医学院大学付属病院の院長を務め、現在は東京・吉祥寺で中国医学整体院を営む。