日本でも寒い時期になると、生の百合(ゆり)根(ね)が売られているのを見かけますね。
百合根は文字通り、百合の花の根っこ(球根)です。
百合根を食用にしているのは日本と中国だけだと言われています。
日本では江戸時代に中国から持ち込まれ、栽培されて一般に食べられるようになりました。
今でも和え物、茶碗蒸しなどにしますね。
大きな百合根を作るためには大変な手間がかかります。
植付けから収穫まで3年かかり、その間ずっと、花に栄養を取られると球根が大きくならないので蕾を取り、病気にならないように気をつけていなければなりません。
収穫の時も、傷つけないように一個ずつていねいに掘り出してオガクズに詰めて出荷します。
生産が大変なので作る人がなかなか増えないようです。
百合の根に関して特筆すべきことは、結核の治療薬が発明される以前、百合の根を薬として使用して多くの結核患者の命が救われていたということです。
中国では唐の時代(7世紀~10世紀)に、すでに結核の診断法や治療法が系統立てて記録されていました。
中でも『百合固(びゃくごうこ)金(きん)湯(とう)』という薬は、以後千年以上にわたって利用されました。
『金』は中国医学の理論では「肺」を表しますので、百合を使って肺の活動を調える処方ということになります。
また近年、これまでの結核治療薬(西洋薬)が効かない新種の変異型結核が現れましたが、『百合固金湯』を用いた治療と中国伝統医学の弁証理論
で目覚しい成果を収めています。
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