akyrise

Vol.132お腹で味わう

湯 忠立先生

2016/09/ 7

私たちが食べ物の味を感じるのは、舌の上に味を感じる「味蕾(みらい)」と呼ばれるセンサーがついているからです。

生理学的には、味は塩味、酸味、甘味、苦味、旨味の5種類あり、口の中で水分に溶け込んだ化学物質が味覚センサーを刺激してそれぞれの味を感じるようになっています。

ところで薬膳では、五味といえば酸、甘、苦、鹹、辛ですが、辛味はどこで感じているのでしょう?
 
実は、辛味などの化学的刺激や、温度(熱さ・暖かさ・冷たさ)、舌触りなどの物理的刺激は、味覚センサーを介することなく、直接神経から脳に伝達されています。

つまり味覚は、舌だけでなく色々な神経によって総合的に作られているのです。
 
最近、こうした味覚信号の伝達に関わる遺伝子が、舌以外の場所にもあることがわかってきました。

人間に関していえば、こうした遺伝子が、十二指腸や小腸などの消化器官にあることが確認されています。
でも、お腹の中で「甘い」と感じる、なんてことはないですよね。

実際には甘いとは感じないものの、糖などの存在を消化器官が認識することで、ホルモン分泌の調節などがおこなわれているのではないかと推測されています。

つまりお腹の中でもしっかり味わって、それに相応しい対応をしていると考えられるのです。
舌で味わうだけでなく、お腹の中でも美味しいと感じられるためには、本当に体が必要としているものを摂ることが大切ですね。

oishi.jpg

※記事の無断転用は禁じます。

この記事の投稿者

薬膳監修:湯 忠立(たん ぞんり)先生

中国遼寧中医学院大学付属病院の院長を務め、現在は東京・吉祥寺で中国医学整体院を営む。