あきゅらいず

Vol.144 標本の話

湯 忠立先生

2016/12/14


「標本」というと昆虫採集や化石の標本を思い浮かべる方が多いでしょうが、中国医学の治療原則ではとても大事な考え方なんです。
 
そこでいう「標」と「本」は、病気の症状と原因を表しています。
例えば、寒気がするという症状を「標」とすると、その原因(「本」)は何かと考えるのです。
寒気という症状に対して厚着をするだけでは、寒気を根本的に抑えることはできないからです。
 
何枚重ねて着ても寒気が治まらないという経験は誰でも持っているでしょう。
表に現れてる状態だけに対応しても、根本的な解決にはなりません。
そして寒気という症状は同じでも、その原因はそれぞれ違うはずです。
 
寒気の根本的な原因にアタックしていくのが中国医学の治療法なのです。
こうした考え方が、薬膳の基本にもなっています。
 
寒いから温かいものを、暑いから冷たいものを食べる、というだけでは「標」の対応に過ぎません。
食べる人の体質や食材の性質を細かく分類しているのも、根本から体質を改善するために必要だからなのです。
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この記事の投稿者

薬膳監修:湯 忠立(たん ぞんり)先生

中国遼寧中医学院大学付属病院の院長を務め、現在は東京・吉祥寺で中国医学整体院を営む。