私たちは普段、一つの食物だけを食べることはありません。
一回の食事でも幾つかの食物を同時に食べています。
その組み合わせによっては、個々の食物の働きがより活発になることもあれば、互いに効力を打ち消したり、
時には人体に有害なものを作り出したりします。
こうした食べ合せは民間でも「ウナギと梅干」「天ぷらとスイカ」など古くから伝えられていますが、中国医学でも長期にわたる臨床実践から多くのものを記録しています。
もちろんその時点では食物に含まれるどの成分がどういう作用をするのかは分かっていません。
ただ、いつ、誰が食べても同じ効果や影響があるという経験的に確かめられた事実から判断されたのです。
食物の組み合わせは薬膳の重要なポイントといえます。
例えば、元気をつけるのに朝鮮人参がいいといって鍋物に朝鮮人参を加えたとしても、それは薬膳とは呼べません。
その鍋に鶏肉や山芋が加わっていれば、効果は倍増しますが、大根が入っていたら効果を半減させてしまいます。
また、牛乳には豊富な蛋白質やカルシウムが含まれますが、チョコレートを一緒に食べると、チョコレートに含まれるシュウ酸と牛乳のカルシウムから、体内で分解されにくいシュウ酸カルシウムが生成されてしまいます。
せっかくのカルシウムが吸収されないだけでなく、
下痢や若禿げの症状を起こしたり、子供の成長発育にも影響を与えます。
このように組み合わせが薬膳の効果を大きく左右するのです。
現在、食物のこうした効能は、自然科学や栄養学などでその原理が解明されつつありますが、その理由が分からないというものも、まだまだたくさんあります。
※記事の無断転用は禁じます。