菊の花は、日本ではお葬式のイメージがありますが、中国では秋を告げる花といわれ、不老長寿の薬として、鑑賞用よりも先に薬用として栽培されていたようです。
現在では中国安徽省(あんきしょう)産の「貢(こう)菊花(ぎくか)」と浙(せっ)江省(こうしょう)産の「杭(こう)菊花(きっか)」がよく使われています。
特に黄山(こうざん)貢(こう)菊(ぎく)は有名で、黄山は安徽省の奇峰(珍しい形の峰)、貢は献上の意味で、漢方医が皇帝に献上品として使ったので、とても珍重されてきました。
菊花は肝臓の働きを調える効能があり、中医で肝臓と関係が深いといわれる目にも作用するので、目のかすみ、視力の低下、疲れ目、目の充血、目の乾き、目のかゆみなどに効果を発揮します。
その他、鎮痛、解熱、解毒作用、風邪初期の治療、高血圧症の頭痛、目眩(めまい)の軽減、慢性咽喉炎(いんこうえん)の腫れ、痛みの症状の軽減などにも有効です。
「九月」は、春や夏に盛んになりすぎた肝の気を落ち着かせるという意味合いで、菊の花の代名詞として使われています。
九月九日は中国では重陽(ちょうよう)の節句。
中国の古典「易(えき)経(きょう)」では、九は陽(陽数)の極まる数字とされ、九が二つ重なるので、「重陽」と名づけ、邪気を払う・・・つまり健康でいる為に、菊花茶を飲む習慣があります。
『九日山僧院 東離菊也黄 俗人多泛酒 誰解助茶香』
(九月九日、重陽の日に、山僧の寺には、東離の菊が今年も黄色に咲いている。
俗人は酒をば味わうが、茶の香りを助けるものだということを誰が知るだろう。)
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