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Vol.156 アミノ酸と老化

湯 忠立先生

2017/03/ 8

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1998年10月、アメリカのスペースシャトル、ディスカバリィ号に77歳のジョン・グレン氏が搭乗し宇宙に飛び立ちました。彼は、年を取るにしたがって骨密度が減ったり、筋肉が萎縮するといった老化現象と、無重力状態での人体の変化に似た点があることに注目し、自らを実験台として様々な医学的・生物学的実験を試みたのです。その中心課題ともいえるのが、老人の蛋白質分解など、アミノ酸と老人の健康に関することでした。なぜなら、アミノ酸と老化には重要な相関関係があるからです。
 
蛋白質に関していえば、その変化は合成と分解という2つの方面から見ることが出来ます。乳幼児から成長期までは蛋白質代謝の過程で、合成が分解より大きくなります。これは身体が成長する中で多くの蛋白質を必要とするからです。成人期になると合成と分解がほぼ等しくなり、体重も安定します。老年期に入ると老化の過程で分解が主となり、合成はゆったりとしてきます。体内の蛋白質は次第に消耗し、高齢者の体内総蛋白質量は青年の60~70%まで下がります。これは筋肉の減少と関係しているのでしょうが、だからといって必要な蛋白質量が少なくて良いということではありません。高齢者においては蛋白質の合成より分解が主となり、また胃液の分泌が減ったり、胃液の酸度が下がることで、蛋白質の消化吸収量が減少します。したがって需要量は、逆に増加するのです。一般的には成人期の30%増くらいが目安といえるでしょう。日常の食事では体重1kgに対して1g前後が蛋白質の必要量といわれますので、一日の必要量は60~75gくらいになります。その中、1/3は動物性蛋白質が良いでしょう。また年齢によって必要なアミノ酸も変わってきますので、蛋白質を質量ともに充分に補給することが、高齢者にとってはとても重要なことなのです。
 

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この記事の投稿者

薬膳監修:湯 忠立(たん ぞんり)先生

中国遼寧中医学院大学付属病院の院長を務め、現在は東京・吉祥寺で中国医学整体院を営む。