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Vol.180 トマトの教訓

湯 忠立先生

2017/09/13

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トマトの原産地は、南アメリカのアンデス高原地帯で、これが中央アメリカのメキシコに伝わり、その後、メキシコを征服したスペイン人によって、ヨーロッパ各地に伝わっていきました。当時、トマトは有毒であるベラドンナに似ていたため、毒であると信じる人が多く最初は観賞用として扱われていました。食用とされるようになったのは、ずっと後になってからです。
 
南米原産のトマトが北米で食べられるようになったのは、ヨーロッパよりも更に200年以上後になってからです。1830年、ロバート・ジョンソンはヨーロッパからトマトの苗を持ち帰り、ニュージャージーの自分の農場で栽培しました。しかし実がなっても買う人がいません。アメリカでもトマトは毒だと信じられていたからです。そこでロバートは、皆の前でトマトを10個食べて毒が有るか無いか確かめて見せましょうと宣伝しました。人々は、嘲笑い、ある医者は「地獄に行ってから自分の愚かさに気がつくだろう」と言いました。予告した日の正午、ロバートは裁判所の前に黒い服を纏って現れました。そして壇上に上がると籠に入れたトマトを取り出し、ひと口食べるごとに「美味しい!」と叫びました。ふた口目を食べたときは、気絶してしまった女性もいました。こうして10個のトマトを完食しても、ロバートはしっかり壇上に立っています。あっけにとられている人たちに、如何でしたと尋ねると、我に返った人たちは拍手喝采を浴びせました。

ロバート・ジョンソンのおかげで今やトマトは世界中の食卓を豊かにしたのですが、この一件は、何事も試してみることが大事だということを教えてくれていますね。私たちは、挑戦し、実践することで正しい知識を得ることが出来るのです。
 

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この記事の投稿者

薬膳監修:湯 忠立(たん ぞんり)先生

中国遼寧中医学院大学付属病院の院長を務め、現在は東京・吉祥寺で中国医学整体院を営む。