前回、免疫力を高めるということを中国医学では正気を強くすることと考えていると書きました。今回は「正気とは何か」について考えてみましょう。
日本語にも「正気(しょうき)を失う」といった言葉がありますが、中国医学の正気(せいき)は、天地間に存在する、物事の根本をなす気を表します。この世界にある全ての物事を作り出しているもとになるもの、それを正気と考えています。
ここで少し「気」の説明が必要でしょうね。中国哲学に「気一元論」という考え方がありますが、そこでは「気」がこの世界を構成する最も基本的な物質であり、その運動変化によって自然界の全ての物事が生み出されるとしています。この思想を受けて中国医学でも人体の生命活動を気の働きと考えているのです。注意していただきたいのは、気を抽象的なものでなく物質的なものとして捉えているということです。私たちの身体が存在し、絶え間なく活動を続けている、その基になっているものが「気」だと考えているのです。
この気が正常な状態にあるときを「正気」と呼び、何かしらの異常を起こす要因となるものを「邪気」としています。つまり「病気」というのは「気が病む」、「正気」が「邪気」によって乱されてしまうことなのです。中国医学で考える「正気」と「邪気」の対立構造が、免疫システムの発想に似ていると思いませんか。
※記事の無断転用は禁じます。